2025年は、モーニング娘。’25の新たな節目
2025年は、モーニング娘。にとって新たな節目を迎える年だと感じます。
7月8日をもって、長年グループを支えてきた9期メンバー・生田衣梨奈さんが卒業。
同期である譜久村聖さんのソロデビュー、鞘師里保さんのavexメジャーデビューと、
卒業メンバーの活躍も目覚ましい2025年は、何か特別な年になることを期待せずにはいられません。
そして、グループを卒業してから俳優として活動の幅を広げるメンバーも数多く生まれています。
今回は、そんな近年のモーニング娘。の軌跡を語る上で、あまり多く語られることのない舞台・ミュージカルについてご紹介します。
2015年・演劇女子部ミュージカル「TRIANGLE-トライアングル-」

2015年6月18日(水) – 2015年6月28日(日) に上演された、演劇女子部 ミュージカル「TRIANGLE-トライアングル-」は、くらもちふさこさんの2001年の作品『α- アルファ- 』(集英社刊)を原案とし、モーニング娘。’15選抜メンバーが演じたミュージカルです。
争いのない惑星アルファを舞台に、惑星アルファの姫・サクラ、幼なじみのオメガ人アサダ、戦いの星ヴィータから移住したキリの複雑な想いを描く物語です。
サクラ視点の物語”トライアングル『α』”、”アサダ視点のトライアングル『β』”の2パターンが上演されました。
Cast(キャスト)

惑星アルファの姫を演じるのは、石田亜佑美さん。
2024年にモーニング娘。から卒業後は、M-line clubへ加入して活動しています。
地元・仙台のバラエティ番組「あらあらかしこ」への出演など、地元への想いを伝える姿がとても印象的です。得意のダンススキルで全体を引っ張り、サブリーダーも務めたことでグループの支柱的存在となりました。
オメガ星からの移民でスワスワ使いの少年を演じるのは、工藤遥さん。
2017年にグループ卒業後、2020年に事務所を退所。現在はフリーで活動されています。
メンバー時代にはショートカットが似合う、ボーイッシュな印象的でした。
卒業後の作品では『スーパー戦隊シリーズ』第42作『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』への出演をはじめ、年に5~6作品以上に出演するなど順調に経験を重ねています。
ヴィータ星からの移民で軍人のキリ中尉を演じるのは、鞘師里保さん。
2015年にモーニング娘。を卒業し、海外留学を経て2019年からソロ活動を開始しました。
メンバー時代には、絶対的エースとして歌唱面、ダンス面を中心にグループを牽引しました。
卒業後には、フリーでの活動やジャパン・ミュージックエンターテインメントへの所属で芸能活動を再開し、2025年6月にavexからのメジャーデビューすることを発表しています。
※()内は、公演当時の所属グループ。

Story(あらすじ)
そこに生きる者のココロを癒し、争いを忘れさせるという惑星アルファ。
ある日、「天のお告げ」により、王の娘サクラの婚約の儀が執り行われることに。
サクラは相手の名前を聞かされぬまま、式までの時間を過ごす…。
王女・サクラ姫。幼なじみのアサダ。戦の星からやってきた軍人・キリ。
三人の想いが複雑に絡み合って膨らむなか、ついに、運命の日を迎える。
少女マンガ界の巨匠くらもちふさこ作品『α- アルファ- 』を原案とし、
その短篇から選ばれたSFファンタジーの初舞台化!
サクラ姫のココロで紡がれる『α』、アサダのココロで紐解く『β』、
視点や主役を変えた二つの物語
「触れれば ココロが、あふれだす。」

物語の見どころは?
【それぞれがもつ、淡い恋心】
物語前半は、サクラ姫×アサダの幼馴染らしい初々しい関係性にときめきながら、
キリ中尉の心に秘められたサクラ姫への想いや過去の出来事に胸を締め付けられます。
【惑星の真実】
「天のお告げ」によって、サクラ姫とキリ中尉の婚姻話が進む中、サクラはアサダに抱く恋心から複雑な気持ちで時を過ごします。『アサダとの将来を選ぶこと=惑星が不穏な未来をたどること』であるとわかっていながら、その想いを断ち切ることができません。
そんな中、幼馴染でもある侍女・ローズウッドから、これまで明かされてこなかった真実を聞かされます…。
サクラ・アサダ・キリ、3人が選ぶ道とは…
【サクラ姫の成長】
屈託のない快活な少女だったサクラが、自身の婚姻が惑星にもたらす影響や、星に暮らす全住民の未来を担う存在であるという自覚を持った瞬間の、慈愛に満ちた真の王女としての表情や振る舞いに心が震えました。
【アサダの決意】
「天のお告げ」によりサクラとは結ばれることのないはずだったアサダ。
しかし、その”出生の秘密”が明かされることで、サクラや侍女ローズウッドまでも巻き込みながら、
それぞれの登場人物がどんな決断をするのか、ラストまで全く読めない展開となっていきます。
【キリの葛藤】
キリは、軍人として生死をさまよう経験を積んできた人物として、争いを知らないアルファ人たちに辟易するなど、一見冷酷に見えるシーンも描かれています。
ただ、その本心には誰よりも平和と愛を重んじ、戦場の第一線で自分の身を犠牲にしてでも誰かを守るという強い意志があり、サクラに対する秘めた想いによって葛藤する姿にも胸を打たれます。

メインキャストの名演技
サクラを演じた石田さんについては、とにかくコロコロと変わる表情が何とも可愛らしい…!
小柄なこともあってか幼少時代にも全く違和感がなかったですし、まさにピッタリな配役だったと思います。個人的には、明るく嬉々とした声色で話すサクラ姫がドンピシャでした。
それは、アサダもキリも恋するよな…という魅力っぱいでした。

アサダを演じた工藤さんは、元々ボーイッシュな風貌とハスキーボイスが魅力なだけあって、男役が格好良すぎる…!!当然、セリフのひとつひとつも男の子らしい表現だったりするのですが、アサダとしてそこに生きていて、実際の舞台で近くで見ても、そこには純朴で正義感溢れる、まさに”本物の少年”がいました。

キリを演じた鞘師さんは、本格的な殺陣やアクションにも挑戦していて、新境地を開拓されたような印象でした。登場人物の中では年齢設定的にも大人な役だったのですが、そちらも違和感が全くありません。グループの中でもエースとしての重圧を背負いながら活動をされていたことで、自然と培われた貫禄がそう感じさせたのかもしれません。

物語を支える、個性的なキャラクターたち
侍女・ローズウッド(小田さくら)
「天のお告げ」により、自身の人生が大きく左右された経験をもつ女性です。
普段は侍女としてサクラに仕えていますが、サクラがキリとの婚姻について迷っている姿を見て、自身の過去について語り、サクラを諭します。
小田さんが持つどこか妖艶な雰囲気と天性の歌声で、物語の中でも重要なシーンをより切なく感じさせます。

スワスワのリンディ(牧野真莉愛)
発電のもとになるスワスワという生物。
基本的に言語は「スワ~~」という言葉だけなのですが、パーフェクトアイドルとも言える牧野さんのキラキラした表情や、抜群のスタイル・長い手足を活かした舞台上でのパフォーマンスで、見事に喜怒哀楽を表現されていました。

国王・ゼータ(須藤茉麻)
アルファ星の国王を演じた須藤さんは、元Berryz工房のメンバーで俳優として活動されています。
温厚ながら一国の主として、重大な決断を担う存在としての重責を抱える役として、モーニング娘。の先輩である須藤さんが良いエッセンスになっています。

少女漫画が原作の舞台を、モーニング娘。が演じる意味
原作となった『α- アルファ- 』は、漫画家くらもちふさこさん作のSF作品です。
作品の中では、4人の俳優が各キャラクターを演じているという設定で、一話完結の連作で物語が次々と進んでいきます。
舞台から先に入った人間としては、この短編から色んなストーリーが膨らんでいったのか…という妙なワクワク感を得ることができます。
女性が男性を演じる舞台としては宝塚歌劇団が有名ですが、宝塚とは違い、「トライアングル」は芝居を専門にしていないアイドルが発展途上ともいえる原石の状態で演じています。
日々、1ステージずつ経験を重ねて演者1人1人が成長し物語に深みが増していく様子と、物語の中でサクラ姫をはじめとした登場人物が成長する様子がリンクするようにも感じます。
そんな彼女たちが演じる舞台だからこそ、観る人もより感情移入して物語を深く理解することができるのではないかと思います。

ただの純愛物語ではない、だからこそ大人に観てほしい
物語の結末は伏せますが、それぞれの立場や役割、責任、経験。
そういったものの中で、誰しもが葛藤を抱えながら過ごしているかと思います。
相手を想う気持ちが、幾重にも重なりあって複雑に絡まりあっていった結果、
1人1人が少しずつ傷を負いながら、癒されながら、救われながら、最も良い方向だと信じて前に進んでいく。
そんな優しくも儚く切ない人間の心理のようなものが、この「トライアングル」という作品にこめられているのではないでしょうか。
最後に
今回は、2015年に上演された舞台「TRIANGLE-トライアングル-」についてご紹介しました。
未完成な美しさを、ぜひ堪能してください。
コメント