『アナウンサー』といえば、テレビ業界の中でも花形のイメージがありますが、
その一方で、特定のテレビ局に入社するいわゆる”局アナ”の場合、立場はあくまで会社員。
世間一般と同じく事務作業や庶務を行うことはもちろん、人事異動も発生します。
今回は、そんな局アナから意外な職業に転身した9名のアナウンサーをご紹介します!

坂上みき(元テレビ新潟、1982年入社・1985年退社)
大阪出身で、現在はナレーターやラジオパーソナリティとして活躍している坂上みきさん。
学生時代に「机に座って事務仕事をすることが考えられず、アナウンサーになることを決めた」そう。それまで新潟には行ったことがなく、あまりののどかさに「ここで暮らすの!?」と驚いたのだとか。
テレビ新潟を退社後は、大阪~東京とフィールドを変えながら、徐々に現在のスタイルを確立。
30代より若い世代のテレビっ子は、ナレーターやラジオパーソナリティとしてのイメージの方が強いのではないでしょうか。
この世界に入るきっかけからして、アナウンサーというよりも更にタレント性を求められるお仕事に居場所を見つけられたのかもしれませんね。
【主な出演番組】
■金曜ロードショー(1997-2009 ナビゲーター)
■サタ★スマ(1999年-2002年 ナレーション)
■エンタの神様(2003年-2010年 ナレーション)
■PON!(2010年-2016年 ナレーション:DJミッキーとして)
八木亜希子(元フジテレビ、1988年入社・2000年退社)
静岡県生まれで横浜育ち、元フジテレビアナウンサーの八木亜希子さん。
局アナ時代には、”おはよう!ナイスデイ”の総合司会や”めざましテレビ”の初代メインキャスターを務めるなど、フジテレビの看板アナウンサーとして長年活躍されました。
退社後は、三谷幸喜監督作品、大河ドラマや朝ドラ、日曜劇場などのドラマの伝統枠にも複数回出演するなど着実に俳優としてのキャリアを積まれています。また俳優業においては、松下奈緒さんや牧瀬里穂さんなども所属している”株式会社ジェイアイプロモーション”と業務提携をしています。
現在でもアナウンス事務所である”フォニックス”に所属し、フリーアナウンサーとして活動されていますが、数多くの作品に出演されている点から、俳優への転身を遂げたアナウンサーとしてご紹介しました。
【主な出演作品】
■みんなのいえ(2001年)
■THE有頂天ホテル(2006年)
■あまちゃん(2013年)
■真田丸(2016年)
■陸王(2017年)
■集団左遷!!(2019年)
田中みな実(元TBS、2009年入社・2014年退社)
近年で、転身したアナウンサーとして強いインパクトを残しているのが田中みな実さん。
アメリカで出生したことやミドルネーム(本名:田中エイミーみな実)を持っていることで、
ハーフと間違えられることもあるようですが、純粋な日本人のようです。
退社後はバラエティ番組への出演が中心の活動をされていましたが、2019年にフジテレビに連続ドラマ”絶対正義”への出演を機に、徐々に俳優業へシフトされていきました。
同時期に発売された写真集「Sincerely yours…」は、60万部以上を売り上げる大ヒットを記録しました。(通常、写真集は3~5万部売れれば大ヒットと言われるので、どれだけの偉業かがわかりますね。)
2024年に6年所属した事務所”テイクオフ”から”フラーム”へ移籍したことで、さらに本格的な俳優業進出を印象付けました。
同年に出演した「ボクらの時代」では、”フリーアナウンサーが芝居をしているという見方をされている”ことに対し、『皆さんにも何の偏見もなく真っすぐ見てもらえるように頑張るしかない!』と語っていました。
十分すぎるほどの実績を持つように思える田中さんですが、ご自身が思うような活動がさらに広がっていくように期待したいですね。
【主な出演作品】
■M愛すべき人がいて(2020年)
■悪女について(2023年)
■あなたがしてくれなくても(2023年)
■マスカレード・ナイト(2021年)
■映画 イチケイのカラス(2023年)
西村真二(広島ホームテレビ、2008年入社・2011年退社)
物語性のあるコントに定評がある、お笑いコンビ”コットン”のツッコミ担当である西村真二さん。
水泳のジュニアオリンピック選手に選ばれたりと運動神経抜群で、
大学は慶應義塾大学卒業とまさに文武両道。
小学生の頃には、「ナインティナインのような芸人になりたい。」と志し、岡村隆史さんへの憧れからか、大学ではブレイクダンスサークルに所属。
当時の相方さんと「社会人を1年だけやった方が良い」という話になり、1年後に一緒にNSCに入ることを約束して就活を開始するも、相方さんは一流企業に就職したためNSC入りを拒否されたそう。
アナウンサー時代には、ニュースコーナー等を担当。
お笑いに活かせると思い仕事を続けていたが、2011年の東日本大震災で知り合いの家族が亡くなったと聞いたことをきっかけに「いつ死ぬかわからない人生、後悔する人生は送りたくない」と思い立ち、同局を退社し東京で活動を始めることになりました。
2012年に現在の相方である、きょんさんと「ラフレクラン」を結成。
徐々に活動の幅を広げる中で、2021年にコンビ名を「コットン」に改名。
それぞれに俳優業などもされているようですので、お笑い芸人としてだけでなく俳優としての道も開けるかもしれないですね。
【主な出演番組等】
■ラヴィット!(2021年~)
■ヒルナンデス!(2023年~)
■M-1グランプリ(2015年~2024年)
■キングオブコント(2012年~2024年)
■NHK新人お笑い大賞(2019年優勝)
■ABCお笑いグランプリ(2017年~2021年)
桝太一(元日本テレビ、2006年入社・2022退社)
日本テレビの朝の情報番組「ZIP!」の初代総合司会も務めた、桝太一さん。
「24時間テレビ」や「真相報道バンキシャ!」の総合司会も務めるなど、同局のエースアナであることは誰もが知るところ。2019年には主任へ昇格したことで、テレビ番組出演以外にも新人アナの教育・育成も務めました。その人気や好感度は、好きなアナウンサーランキングでも殿堂入りしたことからも一目瞭然。
多忙を極め、同局からの期待を一身に背負っているであろうタイミングで、突如として日本テレビ退社を発表。その理由は、「科学の伝え方」(サイエンスコミュニケーション)の研究・実践のために同志社大学ハリス理化学研究所助教に転職することでした。
その後も、バンキシャの総合司会や「鉄腕DASH」内のコーナーであるDASH海岸への出演は継続しています。研究業のほかにアナウンサー業についてのマネジメントは「ソニーミュージックアーティスツ」と業務提携しているようです。
元々理系専攻でもある桝さん、局アナとして十分に貢献したことは言うまでもなく、
ご自身の没頭できる世界の研究者として、一体どんな人生を歩まれるのか、とても楽しみです!!
世界的な研究者として目にする日も遠くないかもしれませんね。
【主な出演番組】
■真相報道 バンキシャ!(2021年~)
■ザ!鉄腕!DASH!!(2012年~)
■24時間テレビ 「愛は地球を救う」(2013年総合司会)
前田有紀(元テレビ朝日、2003年入社・2013年退社)
入社6日後から「やべっちFC」のアシスタントに就任するなど、スポーツやバラエティー、ニュースなど幅広い分野で活躍されました。
くりぃむナントカ・『ぷっ』すま・銭形金太郎・アメトーーク!・ロンドンハーツなど、人気番組に出演する機会も多かったイメージです。
2013年、ロンドン留学のため同局を退社し、フローリストとしての道をスタートさせます。
小さなころから好きだったという花や植物に触れる楽しさを思い出すこととなり、その世界に飛び込むことを決意したそう。
あるインタビューでは、「会社員時代よりも、仕事に向かう道が軽やかで、何もかもが輝いて見える」と語っていました。フラワーブランドguiを立ち上げ、2021年には東京・神宮前に花屋NUR(ヌア)をオープンされました。
2児の母でもある前田さん。ママとしても、ご自身の行動を持ってお子さんたちに好きなことをすることの大切さを伝えているのかもしれませんね。
【主な出演番組】
■選挙ステーション2003(2003年)
■『ぷっ』すま(2008年)
■やべっちFC(2003年~2013年)
菊間千乃(元フジテレビ、1995年入社・2007年退社)
イギリスへの留学経験もある、菊間千乃さん。
フジテレビとTBSを受験して2社とも内定をGETするというエリートとも言える菊間さん。
同期入社の伊藤利尋アナも、めざましテレビでメインキャスターを務めるなど大活躍していますね。
めざましテレビのリポート中にマンションの5階から落下し、全治3か月の重傷を負いました。
その他にも2005年当時、アイドルとして活動されていたメンバーとの報道があるなどして、無期限の謹慎処分を受けた。(実際は、報道内容に誤解を生む内容があったとしている。)
2007年にフジテレビを退社後、新司法試験の受験に専念し、2010年に見事合格。
現在は、弁護士としてお仕事をされています。
「情報7daysニュースキャスター」や「羽鳥慎一モーニングショー」にコメンテーターとして出演するなど、アナウンサーとしての経験も活かした活動をされていますね。
【主な出演番組】
■フジテレビバレーボール中継
■発掘!あるある大事典
■こたえてちょーだい!
■森田一義アワー 笑っていいとも!
伊藤楓(元TBS、2016年入社・2021年退社)
伊藤楓あんは、元TBSアナウンサーで現在は画家として活動されています。
「CDTV」や「ジョブチューン」、「伊集院光とらじおと」「安住紳一郎の日曜天国」など、人気番組にも多数出演されていました。2021年に「伊集院光とらじおと」の中で、同局の退社を発表。
画家としての一歩を踏み出すべく、ドイツへの留学をされました。
アナウンサー時代の清楚な雰囲気とは一変して、金髪など明るくラフなビジュアルに一変したことも、表現者として世界で活動する強い想いを感じさせられます。
個展を開催されるほどに画家としての飛躍する活動は、順調そのものに見えますが、
渡欧直後は自分を画家と呼んでも良いのかというコンプレックスと戦っていたようです。
2024年の個展では、110万円の値で作品が購入されるほどまでになり、ご自身も驚きながら手ごたえを感じたそう。
帰国時に能登半島地震に遭遇したことをきっかけに、復興支援として日本酒ボトルの制作もされています。
【主な出演番組】
■COUNT DOWN TV(2017年~2021年)
■水曜日のダウンタウン(2018年)
■伊集院光とらじおと(2018年)
■安住紳一郎の日曜天国(2020~2021年)
野際陽子(元NHK、1958年入局・1962年退局)
野際陽子さんは、数多くの名作に出演されていた名女優として知られていますが、
実はNHKの元アナウンサーさんです。
大学時代は初代ミス立教に選ばれるなど、その美貌は若かりし頃から折り紙つき。
大学の同期にはミスターこと「長嶋茂雄さん」がいたという華やかな経歴の持ち主です。
NHK入局後は、名古屋放送局に赴任し、天気や婦人番組を担当していたそうです。
1962年に退局後は、広告代理店に転職されました。
その後も、司会業などを行っていたこともあり、”女性フリーアナウンサーの先駆者”と評されることもあります。
1966年にパリへ留学し、帰国時にはミニスカートで飛行機のタラップを降りてくる様子が広く知られています。また、このことから、あのツイッギー来日よりも早かったことから、「日本のミニスカート第一号」とも呼ばれているそうです。
この当時から、かなりハイカラな感覚をお持ちだったのだと感じさせます。
女優としては、「ずっとあなたが好きだった」で強烈なキャラクターの母親役を演じ、以降は『ダブル・キッチン』『誰にも言えない』『スウィート・ホーム』『長男の嫁』などで姑役などを演じる機会が数多くありました。
また、今でも賛否が分かれがちな漫画の実写化作品ですが、1997年に実写化されたのが「ガラスの仮面」。作品内で野際さんが演じた伝説の大女優「月影千草」はまさに再現度120%。
原作者である美内すずえさんも驚愕したと言います。
多くの名演技を私たちの記憶に残し、2016年肺腺癌のためにこの世を去りました。
元アナウンサーという肩書を一切感じさせることなく、女優としての確固たる地位を築き上げた存在として、野際さんに勝る方はいまだにいらっしゃらないように思います。
【主な出演番組】
■大河ドラマ「新選組!」(2004年)
■「ゲゲゲの女房」(2010年)
■ずっとあなたが好きだった(1992年)
■ダブル・キッチン(1993年)
■誰にも言えない(1993年)
■ガラスの仮面(1997年~1999年)
■TRICKシリーズ(2000~2014年)
■DOCTORSシリーズ(2011年~2023年)
■必殺仕事人(1985年~2018年)
■大奥(2003年)
まとめ
以上、アナウンサーから他業種・職種に転身された皆さんをご紹介しました。
元アナウンサーの皆さんが、新たな道でもご活躍されているのは、アナウンサーとして冷静かつ公平にお仕事への取り組まれた経験やスキルもさることながら、一般的な表現者とは違った企業の会社員としての視点を持ち合わせていることも関係しているのかもしれません。
また今後も、アナウンサー経験の後に新しい道にチャレンジし、その活躍の幅を広げる方が現れるかもしれませんね。
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