『踊る大捜査線 N.E.W.』感想レビュー【ネタバレ】|なぜ過去作をここまで詰め込んだ?“踊る”を知らない世代との共通認識|これは“踊るプロジェクト”の壮大なプロローグなのか

※本記事は『踊る大捜査線 N.E.W.』の内容に触れています。鑑賞前の方はご注意ください。

前回の記事では、『踊る大捜査線 N.E.W.』冒頭の誘拐事件を模した「演習」を中心に、過去シリーズのキャラクターが続々と登場するプロローグについて紹介した。

しかし、物語はここからが本番。

都内で発生した殺人事件をきっかけに、青島俊作(織田裕二)たちは再び事件の渦中へと飛び込んでいく。

そして映画を最後まで観終えたとき、筆者が強く感じたのは、この作品そのものが、これから始まる「踊るプロジェクト」の壮大なプロローグなのではないかということだった。

都内で殺人事件が発生。青島が管轄を越えて捜査へ

物語が本格的に動き始めるのは、都内で発生した殺人事件。

ところが、捜査はなかなか進展しない。

犯人像も一向に浮かび上がらず、これといった捜査結果も得られないまま時間だけが過ぎていく。

そんな状況を見かねた青島は、自分の管轄を飛び越え、事件の捜査に乗り出す。

このあたりは、まさに“青島らしさ”を感じる展開だ。

そして、もう一つの事件が発生する。

真下正義(ユースケ・サンタマリア)のもとに届いたのは、ウイルス拡散の犯行予告

青島は若手刑事の美浦(白洲迅)、芝田ひばり(趣里)とともに、この事件の解決にも動き出す。

そこで飛び出す印象的なセリフが、

「一緒に行く? 世界を救いに。」

青島俊作という人物を象徴するような、なんとも青島らしい一言だ。

ウイルス事件の意外な結末

ウイルスを所持している可能性があるとされた研究所へ、青島、美浦、ひばりの3人が乗り込む。

ところが、そこで待っていたのは予想外の展開だった。

ウイルス騒ぎの発端となったのは、スタートレックフリークの三井一郎による虚言。

結果的には、いたずらによって警察の捜査が大きくかき乱されていたことになる。

この一件には、沖田(真矢ミキ)もあきれ顔。

大事件かと思わせておいて、思わぬ方向へ転がっていく。

こうした緩急のつけ方も、「踊る大捜査線」らしいところなのかもしれない。

若き管理官・真下勇気。あの真下正義の息子だった

一方、殺人事件の捜査を指揮することになったのが、若き管理官・真下勇気。

彼の名前からも分かる通り、実は真下正義と真下雪乃の息子だ。

つまり、あの真下正義の息子が、今度は警察官として「踊る」の世界に登場する。

しかも、21歳でハーバード大学を卒業したエリート。

ただし、どれだけ華々しい経歴を持っていても、現場での捜査指揮はまだ経験が浅い。

そのため、北丘雲斗(佐々木蔵之介)をはじめとするベテラン刑事たちからは、どこか軽くあしらわれてしまう。

この「キャリアとしては優秀だが、現場ではまだ新人」という立ち位置が、これからのシリーズでどのように描かれていくのかも気になるところだ。

青島が電話をかけた相手は……

なかなか捜査が進まない中、青島はある人物に電話をかける。

何かアドバイスを求めるかのように。

しかし、電話は留守番電話につながる。

「すみれさ……ん。」

青島が口にする言葉もむなしく、電話はつながらない。

この短いやり取りが、かつての「踊る大捜査線」を知るファンには強く響く。

青島にとって、恩田すみれ(深津絵里)がどれだけ大きな存在だったのか。

あえて多くを語らず、一本の電話でそれを感じさせる演出になっている。

そして登場する「室井モデル」

事件解決の糸口をつかめないまま、時間だけが過ぎていく。

そんなとき、捜査本部に姿を見せたのが、室井慎次(柳葉敏郎)が秋田で面倒を見ていた森貴仁(齋藤潤)と柳町(前山こうが)。

彼らが持ってきたのは、室井が提案した、所轄とキャリアの垣根を越えた新たな捜査方式。

通称、**「室井モデル」**だ。

かつて室井が目指したもの。

その意思を受け継ぐように、捜査員たちは「室井モデル」をもとに事件解決へ向けて動き出す。

ここで描かれるのは、単なる過去キャラクターの再登場ではない。

室井が残したものが、次の世代へと受け継がれていく。

「踊る大捜査線」という物語そのものが、次の世代へバトンを渡そうとしているようにも見える。

犯人は女子高生2人組。舞台はお台場へ

捜査が進むにつれ、ついに犯人が判明する。

犯人は、須永あかね(齊藤なぎさ)と村下希衣子(藤吉夏鈴)の女子高生2人組。

さらに、2人が逃走した場所が「お台場・イマーシブ・フォート東京」であることも判明する。

青島たちは現場へ急行し、犯人を追い詰めていく。

そして、その場所で青島を待ち受けていたのは、単なる犯人との対決だけではなかった。

青島の前に蘇る「踊る」の記憶

迷い込んだ部屋で、青島は不思議な光景に包まれる。

そこに現れるのは、これまで青島と深く関わってきた人物たち。

先輩刑事・和久。そして室井。さらに、青島にとって唯一無二ともいえる存在、恩田すみれ。

そのほかにも、これまでの「踊る大捜査線」で青島と関わってきた仲間たちの姿が次々と蘇る。

まるで、青島自身がこれまで歩んできた道のりを、一気に振り返っているかのような場面だ。

そして、その直後――。

青島は須永に背中を刺される。

過去の経験から一命を取り留めた青島は、美浦、ひばりらのもとへ駆け付け、最終的に犯人逮捕へと至る。

事件は、ここで決着する。

犯行動機もまた、“今”を感じさせるものだった

事件の結末を迎えても、そこに分かりやすい大義や、壮大な復讐劇があるわけではない。

犯行動機は、ある意味で現代的ともいえるものだった。

これまでの「踊る大捜査線」に登場してきた事件とは、また少し違う種類の事件。

だからこそ、今作が“現在の東京”を舞台にした新しい「踊る」であることも感じさせられる。

ラストで青島を待っていたのは、あの「第二湾岸署」

事件を終えた青島は、タクシーに乗って帰路につく。

そして、そのタクシーを運転していたのが、かつて青島と対峙した田中文夫(近藤芳正)だった。

田中は青島に、「まだ刑事やってるんですね。」とつぶやく。

その言葉を残して、青島を見送る。

そして青島がたどり着いたのは、見慣れたお台場の、とある場所。

そこには工事中と思われる建物があり、掲げられていたのは――

「第二湾岸署」

この瞬間、「まさか」と思った人も多かったのではないだろうか。

そして最後にスクリーンに残された文字。

「ODORU LEGEND STILL CONTINUED」

さらに聞こえてくる、電話の通話音。すべてが終わったようでいて、実は何も終わっていない。

そんな心地よい余韻を残して、映画は幕を閉じる。

『N.E.W.』は、本当に“新作”なのか?

ここからは、今回の映画を観終えての個人的な感想だ。

前回の記事でも触れたように、冒頭の誘拐事件を模した「演習」は、今回の映画におけるプロローグだった。

しかし、映画を最後まで観て感じたのは、『踊る大捜査線 N.E.W.』という作品自体が、これから始まる「踊るプロジェクト」の壮大なプロローグなのではないかということだった。

その理由の一つが、過去作品からの登場人物の多さだ。

連続ドラマや劇場版だけではない。

スピンオフ作品まで含め、主要キャラクターはもちろん、かつての犯人役や名サブキャラクターまで、まるで同窓会のように次々と登場する。

これは単なる「懐かしさ」だけでは説明しきれない。

むしろ、これから始まる新しい「踊る」の世界に、これまでの歴史を丸ごとつなぎ直しているように感じられた。

過去の名シーン、名セリフもこれでもかと登場

懐かしさを演出しているのは、キャラクターだけではない。

「踊る大捜査線」を知るファンなら、「あっ!」と思わず声が出そうになるような、過去作品へのオマージュが随所に登場する。

例えば、青島と室井の約束を象徴する「コーヒー」。

そして、車中で青島が眠り込む姿。

さらに冒頭から登場する「セブンベア」。

これは数々の事件を引き起こした日向真奈美を思い起こさせるアイテムだ。

ほかにも、過去作品を知っているからこそ意味が分かる場面や、名セリフを思わせる演出が次々と登場する。

ここまで来ると、単なるファンサービスという言葉だけでは少し足りない。

明らかに、過去と未来をつなぐための仕掛けとして配置されているように見える。

だからこそ、今回の作品を「過去作の焼き直し」とだけ捉えるのではなく、次回以降に向けた“種まき”として観ると、また違った見え方をするのではないだろうか。

「連続ドラマ」ならぬ「連続映画」と考えると見えてくるもの

そもそも「踊る大捜査線」は、連続ドラマから始まった作品だ。

テレビドラマ、スペシャルドラマ、劇場版、スピンオフ……。

一つの作品だけで完結するのではなく、さまざまな作品を積み重ねながら、一つの大きな世界観を作り上げてきた。

そう考えると、今回の『N.E.W.』も、単独の映画としてすべてを完結させる必要はないのかもしれない。

「連続ドラマ」ならぬ「連続映画」。

そう考えれば、今回の作品で過去のキャラクターや出来事を大量に登場させ、最後に「第二湾岸署」を提示したことにも納得がいく。

今回描かれた事件そのものだけを見るのではなく、

「ここから、また新しい物語が始まる」

という視点で観る。

そうすると、『踊る大捜査線 N.E.W.』というタイトルに込められた意味も、少し違って見えてくる。

“踊る”は、もう一度動き始めた

長年にわたって多くのファンに愛されてきた「踊る大捜査線」。

今回の映画には、過去作への懐かしさがこれでもかというほど詰め込まれている。

そのため、「懐かしいだけなのでは?」と感じる人もいるかもしれない。

しかし、筆者にはむしろ、その懐かしさこそが**これから先の物語へつなぐための“バトン”**のように感じられた。

和久から室井へ。

室井から次の世代へ。

そして青島から、これからの「踊る」へ。

映画の最後に登場した「第二湾岸署」と、

「ODORU LEGEND STILL CONTINUED」

という言葉。

これは、文字通り「伝説はまだ続いている」という宣言なのだろう。

『踊る大捜査線 N.E.W.』は、過去を振り返るためだけの映画ではない。

むしろ、これまでの「踊る」をすべて抱えたうえで、もう一度この世界を動かし始めるための一作だったのではないだろうか。

二時間を超える一本の映画そのものを、これから始まるプロジェクトの“プロローグ”として成立させられる。

それができるのは、長い年月をかけて一つの世界観を積み上げ、多くのキャラクターを生み出してきた「踊る大捜査線」だからこそなのかもしれない。

過去作を知っている人なら、懐かしい場面を探しながら観るのもいい。

そして、初めて観る人なら、ここから始まる「踊る」の新しい物語として観てもいい。

大切なのは、今回の一本だけで「すべて」を判断することではなく、これから続いていくかもしれない物語の中で、この作品がどんな意味を持つのかを見届けることなのではないだろうか。

“ODORU LEGEND STILL CONTINUED.”

その言葉が残した余韻とともに、次の「踊る」への期待を抱かずにはいられない。

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